動物大好きな次女は、ペットを飼うのが夢だ。とりわけ猫が大好きで、常日頃から猫を飼うことを切望している。祖母の家の飼い猫のお世話をしたり、週末に出される自由研究ノートは猫の種類の解説、猫の動画を毎日チェックし、可愛い写真をスクリーンショトで保存している。そういえば保育園の頃、七夕の短冊に「ネコが飼いたい」と書いていた。
しかし、我が家では犬や猫は飼わないと決めている。夫は動物が苦手だし、私もペットのお世話にまで手が回らない。子どもを育てるだけで手一杯、というのが本音だ。
かつて一度だけ、次女が「ネコを飼いたい」と夫に相談したときの答えは忘れられない。「飼ってもいいけど、この家から出ていってね」とバッサリ斬られておしまいだった(笑)
コロナの影響で次女の3月の誕生日パーティーは中止、未だプレゼントをもらえていなかった。これと言って欲しいものもなく、駄菓子をまとめ買いして満足な次女だったが、6月以降、蒸し暑い日が続くようになって「かき氷機が欲しい」と言うようになった。
私から夫に相談すると、「場所を取る・洗うのが面倒・買った方が美味しい」と速攻でダメな理由トップ3を述べた。そして次に、思いもよらない発言が飛び出した。
「それよりも、やっぱりペットを飼ってあげたらどうかな」
じつは3月の誕生日前に一度「小動物を飼う」案は出ていた。ハムスターなら私たちのような哺乳類ペット初心者でも飼えるかと、夫婦で色々検索して調べ、専門的なブリーダーさんのサイトに行きついた。そこには本格的な手作りの巣箱や飼育の手間、管理の難しさが綴られていた。それを読んで、「これはとても無理だ!」と気持ちが萎えてしまい、うやむやになったままコロナで仕事や生活が激変し、対応に追われてペットどころの騒ぎではなくなってしまったのだ。
内向的でおとなしく人見知りで、これと言って趣味も特技もない。でも動物愛はとてつもなく深い次女にとって、ペットを飼うことが最高のプレゼントだというのは確信していた。ここは次女のために思い切ってハムスターを飼う事に踏み切った。
ハムスターより先に、まずは飼育ケースなど必要な道具を揃えなければならない。二人で意を決してネットショップで最低限必要なものを購入した。
一つ目のハードルを越えた私たち。これでもう後戻りはできない。
金曜日に商品が無事到着した。次女と飼育ケースを組み立て、夕方からペットショップに買いに行く計画だった。
「かき氷機だと思っていたのに、何かが違う・・・。」
夫と組み立てながら、次女は薄々何やら生き物の飼育ケースだと気付いていたようだが、まさか家でペットを飼えるとは信じがたく、給水機にネズミの絵が描いてあるのを見ても最後まで半信半疑でいた。長女はハムスターを飼おうとしていることを察して私に目配せをし、組み立てる様子をただニヤニヤしながら眺めていた。
「じゃあ、選びにいく?」この言葉でハムスターだと確信した次女は、はにかんだような笑顔で静かに喜びを噛みしめているかのようだった。
念のためペットショップに電話をかけて確認すると、何と!すでに完売したとのこと。昨日の時点では数種類のハムスターが複数匹いたのに、まさか今日一日で売り切れるとは全く予想していなかった。次の入荷は来週末と言われ、飼育ケースはあるのに中は空っぽというむなしい状況となった。しかし、これでじっくりどの種類を飼うか、生後何か月くらいの子がいいのか、飼育に必要な環境について等、調べる時間ができた。
「きっと縁のある子に巡り合うから、焦らず待とう」と次女に声をかけた。ハムスターを飼えることだけで満足している次女は、がっかりした様子もなく素直にうなずいた。