次女 Sunny は現在小4だ。
小3の終わり頃から、友達と放課後に遊ぶことが多くなった。うちは共働きとはいえ在宅ワーカーなので、学校が終わると電話がかかってきて、「今日○○ちゃんが遊びに来てもいい?」と聞かれる。
ひとり遊びに来ると、その話を聞いた他の子が遊びに来て、いろんな子が日替わりで訪ねて来た。夫は、「子どもの頃は友達と遊ぶことが一番大事!」という考えなので、家に誰も大人がいない日以外は、まず断ることがない。次女が仲良しの友達と楽しそうに遊んでいる姿は、見ていて微笑ましいものだ。
小4になってクラス替えがあり、仲良しだった子と違うクラスになって落胆していたが、やがて同じクラスになったAちゃんと、よく遊ぶようになった。
その子は保育園の頃からの幼馴染だ。活発で末っ子ならではの積極性と社交術で、沢山友達がいる。しっかり者で運動神経も抜群だ。一方、Sunny は引っ込み思案で、気配を消すことが特技、のんびり屋でマイペース。 運動も苦手である。 しかも誰より強情で、納得しないと動かない不器用なタイプだ。だからいつもAちゃん主導の遊びをしている。Aちゃんに誘ってもらえないと遊ぶ人がいなくなってしまうのを恐れて、このワガママな Sunny が自我を押し殺して付き合っているという感じだった。一緒にいて楽しいけれど、命令されたり、たまにいじわるなことをしてくるAちゃんには、かねてから不満も抱えていたようだ。
そんなある日、図工で版画を制作することになった。テーマは「花」で、自分の好きな花を選んで絵を描き、版画にするという授業だ。その版画にする花を選ぶときに、「保育園でひまわり組だったから、ひまわりの花にしよう!」とAちゃんに半ば強制され、渋々ひまわりを描いたとのことだった。
Sunny は、はじめ断ったらしいが「じゃあ、あなたはひまわり組じゃないんですね!先生たちに感謝してないの?お世話になったのに、ひどい!」と言われたらしい。
Sunny はその時、仕方なくひまわりの絵を描いたけれど、やはり納得いかなかったようで、「私は、本当はひまわりは嫌なの。でも、他に描きたい花が見つからない・・・。」と、ちょくちょくこのエピソードを私に話していた。
ある日、Sunny は真剣に版画の花についての悩みを私に吐露してきた。「私は、やっぱりひまわりは描きたくないんだよ。でも断るとAちゃんが怒るし、他に友達いないからボッチになって遊ぶ人がいなくなっちゃうから断れないのよ。」それを聞いていた姉の Yummy が「じゃあ、あなたはまだ保育園児なんですか?もう小4ですよね?昔お世話になったこととは全く関係ないでしょう?」と、Aちゃんの言葉の矛盾点を挙げ連ね、「我慢して一緒にいるくらいなら、ボッチでいいじゃん。これは Sunny の作品なんだから、Sunny が好きなものを書くべきだよ。」と、普段はうっとおしがっている妹に、親身にアドバイスをしていた。
「例えば私なら藤の花を描くけどね。」と Yummy がササっと藤の花のイメージ画を描き、版画の構図まで指導してくれた。藤の花の画像を見せると、Sunny はパッと目を輝かせ、「私、藤の花が描きたい!」と興奮した様子で言った。「やっと見つけた!」というような、とても嬉しそうな笑顔を見せた。
「明日、Aちゃんに、ひまわりをやめて藤の花にするって言う。」と決意を固め、お姉ちゃんが描いてくれた絵を見ながら全部消して描き直す、と張り切っていた。
「明日、Aちゃんに文句を言ったら、どう思うかな?スッキリするだろうな!」と、ニヤニヤ悪い顔をしていた。そして、今までAちゃんに言われて嫌だった悪口や、されて嫌だった出来事を次々と語り出し、「あのとき私はこんな気持ちだった。もっとこうして欲しかった。」など、怒りを露わにしながら、何度も言ってやりたいセリフを練習していた。
そして翌朝。興奮冷めやらぬ様子で、玄関を出るときも「あー楽しみ!!」と言いながら、 勇んで登校していった。初めて逆らうことへの緊張や、おどおどする様子はまるでなく、何か吹っ切れた様子で「楽しみ!」とニコニコしている Sunny が、少しだけ頼もしく見えた。
帰宅後、どうなったか尋ねると、「朝、ちゃんと言ったよ。そしたらやっぱり『じゃあ、ひまわり組でもないし友達でもないんだね。一緒に遊ばない人はあっちに行って!さようなら。』 って怒って言われた。」と。そして、休み時間は一人で過ごしたらしい。
しかしその翌日、突然Aちゃんが「藤の花を描いてもいいよ。」と言ってきたという。その後、Sunny が風邪で学校をしばしば休んだとき、毎回連絡張やプリントを届けてくれた。それ以来、また一緒に遊ぶようになって、何事もなかったように、しょっちゅう家に来ている。自分の気持ちをはっきり伝えたことで、もっと仲良くなれたそうだ。
ナヨナヨして頼りない印象を与えるが、じつは気が強くブレない Sunny。人の目を気にして空気を読みすぎたり、嫌な気持ちをごまかさず、「嫌ものは嫌。」「自分はこうしたい。こう思う。」を臆せず表現できる子に成長するためにも、友達との遊びは欠かせない勉強のひとつなのだと実感した。大人になって、人との距離感や人付き合いでしくじらないためにも、子どもの友人関係は大切にしたいものです。
しかしながら、休日の朝9:30からアポなしで来られると、ちょっと焦りますけどね・・。