次女はメガネっ子だ。
きっかけは3歳児検診の視力検査だった。家で行う簡単なテストで、リンゴや飛行機、車など大小の絵を2.5m離れたところから見て当てるものだったが、次女の正解率は左右とも5問中2問くらい。何度かやってみたが、「わかんない!」と嫌がってやめてしまう。きっと質問の意味自体を理解していないのだろうと軽く思っていた。
ところが、保健師さんは結果を見て、「これは弱視の疑いがあるので大学病院で検査してください」と言う。寝耳に水で、絶句してしまった。まさかうちの子、メガネになるの???
「これまでに、気になるしぐさはありませんでしたか?例えば、テレビを近くで観たがるとか、目を細めて見るとか、片方の目で見ようとする、とか。」そんな仕草は見られなかった。
本人にとっては、自分の見ている映像が全て。だんだん視力が落ちてゆけば気づくのだけど、もともと見えてなければ見えにくいという概念すら持っていないから、異変に気付きにくいそうだ。
夫に報告すると「え?まさか。ただ分かってないだけでしょ。大げさだよ。」と、信じていない様子。
まあ、とにかく大学病院で検査すれば分かる事だし、と思い、さっそく近くの大学病院の眼科に予約をした。
検査の日、予約した時間に行くと、待合室はとても混んでいた。この大学病院には、小児眼科もあって、大勢のメガネっ子達がいた。みんな可愛らしいメガネをかけている。中には赤ちゃんもいた。
この日は病院の都合なのか特別に混んでいた。大人も大勢待っていて、なかなか呼ばれない。
かれこれ1時間半待って、ようやく視力検査が始まった。
車のハンドルのように大きなランドルト環の模型を持たされて、「同じ向きにしてね」と言われた。
おなじみの視力検査の他にも、近くの見え方を調べるため、私でも見えないような、胡麻の半分より小さな絵を見せられたり、3Dの絵に隠れている動物を当てたりと、まるでゲームのように検査は行われた。
子供は、ピント調節能力が高く、見ようとすれば実際の視力以上に見えてしまうらしい。
そこで、目の筋肉を一時的に麻痺させる目薬を3回、10分程度の感覚を開けて差し、再検査することになった。
その目薬はしみるらしく、大抵の子どもは泣いてしまうそうだが、次女は泣き言ひとつ言わず、じっと耐えて嫌がることなく3回無事に差し終えた。我が子ながら見事な根性だ。
そして再検査の結果、軽度の「乱視」の疑いがあることが分かった。弱視でも遠視でもなく、両目の視力自体は平均に比べて弱いものの同じくらいだが、物がだぶって見えているため見えにくいようだ。
「子供はその日の調子で視力にムラがあって正確な検査が難しいので、何度か検査をした上でメガネで矯正するかどうか決めましょう」ということで、また3ヶ月後に予約した。この3ヶ月の成長で視力が伸びる可能性もあるらしい。何か訓練をした方がいいか尋ねると「特別なことはしなくていいです。普通に生活してください。強いて言えば、とにかく目を使う事。テレビでもゲームでも何でもいいので見せるようにしてください」という。テレビやゲームなんか視力回復には悪影響だろうと思っていたのに意外だった。
残念なのは、次女の乱視は生まれつき角膜や水晶体が歪んでいるためのものなので、メガネをかけても治らないことだ。3歳にしてメガネをかけて、不自由な思いをしても治らないとは切ない。もう一生、メガネを手放せない生活になるのだと思うと、かわいそうに思ってしまう。私も夫も強い近眼で、おまけに乱視もある。遺伝だから仕方がないことだけど…まさかこんな小さいうちからとは。
頑張ったご褒美に売店でハーゲンダッツのイチゴのアイスクリームを買ってあげた。
「おいしい♪」と無邪気に笑う次女の姿を、何とも言えない複雑な気持ちで見つめていた。
病院に10:30に着いてから、およそ5時間かかって、ようやく病院を出た。さすがに疲れたが、まだ午後4時前でお天気も良かったので、駅周辺をブラブラ散策し、お肉屋さんでコロッケや鶏手羽の煮物を買った。途中公園を発見し、滑り台やブランコで遊んだ。ベンチでは、次女のお菓子の食べこぼしにスズメやハトがたくさん群がってきて喜んでいた。
つい日々の忙しさで「はやく」と焦ってしまいがちだけど、お花や空に浮かぶ雲や鳥など、意識的に自然の景色をゆっくり見せてあげよう、と思った。