4歳児の自立 〜その後〜

「Fさんちの子になる」宣言から数日が経った週明けの月曜日。娘の保育参観のため、3人で一緒に家を出た。娘は私が一緒に登園するのが嬉しいらしく、朝の仕度も張り切ってサッサと自分で済ませていた。

歩きながら、主人に今後Fさんからの誘いを断るべきか相談したが、「…分からない。そもそも4歳でけじめをつけろと言うのが無理なのかもしれないし。」と言う。「行かないように」と言うかと思ったのに、意外な返事だった。結論の出ないまま駅で主人と別れ、私と娘は保育園へ向かった。

保育参観から帰宅して間もなく、Fさんから食事のお誘いメールが来た。私はFさんに電話をした。娘が本気でFさんの家の子になりたいと言っていること、伺ってしまうと前回のようにご迷惑になるといけないので、どうしたらよいか率直に聞いてみた。

するとFさんは「4歳の頃には、そういう時期があるのよ。赤ちゃんが生まれてくることの影響もあると思うしね。もしまた泊まりたいと言ってもちゃんと断るし、もし大騒ぎしてもウチは全然構わないから。何度か繰り返し言い聞かせているうちに、分かるようになるから大丈夫よ。ちゃんとSちゃんにもお泊まりはできないと言っておくから。」とおっしゃった。ならば試しに今日行ってみて、娘の様子次第で次回からどうするか決めようと思った。

そして保育園のお迎えの時間。娘は私を見るなり、なぜか「今日、Fさんちにはいかないよね?」と、確認してきた。

私:「あのね、今日もおいでって言ってくれてるの。でもね、今日はお泊まりできないんだって。Fさんちの子になりたいとか、泊まりたいってワガママ言わない約束ができるなら、行こう」と娘に言った。すると娘は「うん」と静かに頷いた。

娘は素直に歩き、家に戻っていつもの三輪車に乗ってFさんのお宅へ向かった。部屋に入るとSちゃんが出てきて「今日、Fさんちにはお泊まりしないんだよ!2月になったら泊まるんだよ!!」と娘に教えてくれた。そしてFさんが「2月の最初の土曜日に、保育園が終わったら泊まりにおいで」と付け加えた。娘も具体的な日にちの提案に納得したのか、ワガママひとつ言わず、私が帰ろうと声をかけると、すぐに仕度を始めて、すんなり帰ってくれた。あまりの聞き分けの良さに、なんだか拍子抜けしてしまった。

その夜、母から電話があった。私のブログを読んで電話をかけてきてくれたのだ。娘が代わりたいというので電話を渡すと、母に「Fさんちの子になるの?」と聞かれたのだろう、娘は何だかバツが悪そうにしていた。後で母に代わると「なんだかあまり触れてほしくない話題みたいよ。」と笑っていた。

私も母に、ひどいことを言ったり悪態をつきながら成長していったのだろうが、何を言ったかまで覚えていない。一方で母も、私が受けてきた子ども時代の厳しいしつけについて、まるで覚えていないと言う。あれだけのスパルタ教育をしておいて「ええ!?お母さん、そんなことしたっけ?」とは…呆れたものだ。「だって、こっちだって親としての経験がないから余裕なかったもん」と母は言い訳していたが、そう、まさに今の私は余裕など微塵もない。経験がないから俯瞰できず、ちょっとしたことでカリカリするし、心配するし、悩むし、傷つくこともあるのだ。

子育てを終えた人生の先輩たちは、口を揃えてこう言う。「これから数えきれないくらい色々大変なことがあるけど、誰もが通る道ですし、いつの間にか自然に解決しているものですよ」

確かに、たった4年間でも、娘の成長過程では色々なことがあり、その都度悩み迷ったけれど、いつの間にか解決していた。子育てとは、その繰り返しなのだろう。

この一件があって、以前よりも娘を見る目が変わった。なんというか、一層可愛く思えるようになったのだ。そして娘の言動ひとつひとつが生意気だけれど面白いと感じる余裕が生まれた。こうして親も成長し、たくましくなっていくのだと学んだ出来事だった。

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