早いもので12月に突入した。妊娠6ヶ月を迎え、仕事関係の先生方や生徒たちに報告をする日々だ。
普段、滅多に話す機会のない、お偉いピアノの先生方に妊娠報告と引き継ぎの件でお手紙を出すのは緊張して気が重かった。しかし、避けては通れないことなので、思い立って11月末に一斉に送った。
生徒たちも、大きくなったお腹に気づいて「やっぱり」という反応を見せる。
そんな中、生徒として来ているピアノの先生のお話がとても心に染みた。
産後しばらくお休みさせて頂くお話をして、いつ復帰できるか分からないし、生活がどうなっていくか不安だと何気なく話した。すると「大変なのは、5年です。」ときっぱりおっしゃった。
その方は、二児の母。上が男の子で下が女の子だ。私の年頃に、やはりとても仕事が忙しくて楽しくて、子どもより仕事を優先しており、自宅レッスンの他にも、講座だなんだと家を空けることが多かったという。
「もしお子さんが男の子だったら、小さい時にちゃんと向き合って、甘えさせてあげてください。しばらくは鬱々としたり、大変な思いもなさるでしょうけれど、5年間しっかり一緒にいてやれば、男の子は自立していけます。
女の子は何でもしゃべるから、さほど問題はないんですが、男の子はあまり話さないから自分の中に溜め込んでしまうようです。しかも息子の時は、途中から仕事を始めたものだから母親を取られたように思ったようで、寂しい思いをさせたようです。その反動で、中学、高校と非常に苦労しました。
その息子も30歳を過ぎ、今では私がしていることを認めてくれて、何でも話せる良い関係になりましたが、どこか甘えが抜けなくて…やっぱり子どもの頃、ちゃんと受け止めてあげていればよかったと後悔しているんです。
仕事は子育てが落ちついてからでもできますが、子育ては今しかできません。だから焦ることはない、子どもが親を必要としているときに、しっかり向き合ってあげて下さい。」
そして一番印象深かったのは、この言葉。
一番大切なのは「家族」です。生徒はどんなに心を砕いても、手をかけても離れていく子は離れていくものですが、家族は違います。一生、関係は続きますから。
確かにそうだ。生徒は都合のいいときにやってきて、自分の都合で来なくなるものだということは私も良く知っている。悪気はないが、みんな自分のことで一生懸命なのだ。だから私も、仕事を休むことに必要以上の罪悪感を覚える必要はない。後の事をきれいに交通整理し、誠実に対応していくのみだ。
確かに今まで仕事にかまけて、娘のことも後回しにしてしまっていたし、そろそろ習い事のことも真剣に考えてやりたい。ここでまた仕事をリセットして、家族のために生活を仕切り直すいい機会と捉えよう。おかげで何かが吹っ切れた気がした。