大部屋に移ったその日、初めて我が子と過ごす夜を迎えた。
病院側から「哺乳表」というものを渡され、授乳した時刻と、左右それぞれのおっぱいを吸わせた時間を記入するように言われた。
以前、子育てをしている友人から「夜は3時間おきに授乳で大変!」という話を聞いていた。私もそれくらいは覚悟していた。
・・・しかしそれは非常に甘い考えだった。
消灯時間は10時。大人が寝るには早すぎる時間だというのに部屋は暗くされ、皆それぞれがベッドの明かりで本を読んだりイヤホンでテレビを観たりして静かに夜を過ごしている。
そんな中、私は我が子の一挙手一投足にビクビクしていた。
産後すぐは、まだ母乳も十分には出ない。その上、赤ちゃんも吸うのが下手で吸う力も弱いため、一度に沢山飲む事はできない。それでちょこちょこ飲んではちょびっと寝て、すぐ泣き出してまたおっぱいを飲む・・・・ひたすらこの繰り返しだった。
初日はぐずって泣き出す我が子に途方に暮れてしまい、仕方なく助産師さんに預かってもらうことにした。3時間ごとに呼びに来てもらってナースステーションで授乳する、「通い授乳」という方法を取らせてもらった。
2日目からはなんとか自分でやってみようと思い直し、ほとんど徹夜状態で朝を迎える日々が続いた。
ぐずる声がちょっとでもしようものなら、すぐに抱き上げ、おっぱいをあげる。ギャーギャー泣き声を上げられたら近所迷惑(?)だ。疲れていても眠くても放っておくことなどできない。とにかく乳首を含ませておくしか方法はない。
それでも泣き止まないときには、我が子とともに部屋を出て、病棟内をウロウロ散歩した。デイルームで授乳したり、廊下の椅子で授乳したり、部屋以外の場所で授乳することもしばしばだった。
暗くて狭いベッドで息を殺しながらじっと授乳していると気がめいってしまうので、自分のためにも夜中の散歩は日課となった。
最後の手段は「添い寝で授乳」だ。本来は赤ちゃんがベッドから落ちたり母親がつぶしてしまう危険性があるため許可されていないのだが、助産師さんが見るに見かねて特別に許可してくれた。
すると効果てきめん!おっぱいを飲んで疲れてウトウトしたまま眠りに入り、やっと2時間ほどまとめて寝てくれたのだ。あの時の喜びは今でも忘れられない。
どうやらコットの寝心地がよくないようだ。「授乳後コットに寝かすと、すぐぐずり出すが、添い寝すると赤ちゃんが安心して落ち着く例は多い」と助産師さんが言っていた。
私にぴったり寄り添って、一生懸命おっぱいをコクコク飲んでいる小さな我が子を見ていると、愛おしくて仕方がない。
我が子の体温を感じながら、なんて幸せなんだろう・・・と、目頭が熱くなった。