大部屋へ

19日の昼、大部屋のベッドが空いた。思いのほか早く入れることになってラッキーだった。
さっそく荷物をまとめ、赤ちゃんとともに大部屋に移ることになった。
大部屋には長期入院の妊婦さんたちが入っていた。糖尿病の人、前置胎盤の人、双子を妊娠している人、帝王切開予定の人・・・。皆それぞれリスクのある妊婦さんたちだった。
ベッドを覆うカーテンを開けっ放しにして、皆打ち解けた様子で歓談していた。その中に入って行くのは結構勇気がいった。しかも赤ちゃん連れは私だけ。
一人くらい赤ちゃん連れのお母さんがいると思っていた私は、大部屋に移ったことを少し後悔した。
これじゃあ、赤ちゃんが泣いたら気を使うではないか。皆が赤ちゃんと同室ならお互い様なのだが・・・。健康で、無事に出産を終えた私の方が肩身が狭い。
しかし、皆そんなことは全く気にしていない様子で、話かけてきたり出産の時の話を聞きたがったりした。

団体生活というものは、誰に説明されるわけでなく、自然に決まり事ができるものだ。
例えば共同の流しで洗顔や歯磨きをするのだが、流しを使った後は、置いてある雑巾で跳ねた水しぶきをきれいに拭きとるのが暗黙の了解となっていた。
それから、シャワーの順番も受付の予約表に名前を記入し、順番に入る。シャワーを終えたら次の人の部屋まで声を掛け、自分の名前の横にチェックを入れる。
高校生活を寮で過ごした頃を思い出し、懐かしく思った。

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