我が子との対面

「おめでとうございます。よく頑張ったねー!はい、ママですよ」
私の顔のすぐそばに、たった今生まれたばかりの、まだ血で汚れたままの赤ちゃんがいた。大きな口を開けて腹の底から泣き叫んでいる。

「へぇ〜、あんたが入ってたのか〜。やっと出て来たねぇ・・・」

これが私の第一声である。ストレステスト時の 4D 写真では横顔しか見られなかったが、実物はこんな顔してたんだね〜。こうして見ると、写真とはまた違う顔をしているような気がした。
分娩中、「赤ちゃんに会えたら、一番最初に何をしたいですか?」と聞かれたので、「おっぱいをあげたいです」と答えた。
それで早速、生まれたての赤ちゃんにおっぱいをあげてみることにした。
赤ちゃんの口に乳首を近づけ、くわえさせると、赤ちゃんは見事おっぱいを吸い始めた。思ったより吸引力が強いことに驚いた。うわーすごーい、誰も教えていないのに、本能的におっぱいを吸うようになっているのね!・・・確か、お腹の中で練習してたんだよね。すごいすごい!!

赤ちゃんは、これから体を拭いたり、小児科の先生の診察等があるらしい。
「実は、予定日を過ぎていたことで羊水が汚れていたんです。もしかすると感染症の疑いがあるかもしれないので、診てもらいますね。もし感染症があっても、治療でちゃんと治りますから心配いりませんよ」と助産師さんは説明してくれた。
そして泣いている赤ちゃんを抱いて分娩室から出て行った。

その間、私は会陰の縫合をされ、体を拭いてもらう。そして点滴を打たれたまま2時間ほどこの分娩室で休むように言われた。
助産師さんが夫に電話をしてくれて、しばらくして母と夫が面会にやってきた。すでに赤ちゃんとは対面したようだ。

「おつかれさま」

夫が一言、声を掛けてくれた。多くを語らなかったけれど、一番心配していたのはきっと夫だったと思う。長く苦しい出産だったが、母子ともに元気な様子を確認して、ようやくホッとしたのではないだろうか。

母はろくに食べていない私を気遣って、ヨーグルトドリンクとあんぱんを買ってきてくれた。
確かにお腹が空いている。すぐにでも食べたかったが、さすがに分娩室で食事するのはマズいので我慢する事にした。

そして、我が子が分娩室に戻ってきた。「ほんと、元気な赤ちゃん!こんなに泣く子もめずらしいですよ」と助産師さんに笑われるほど、元気いっぱいの我が子だ。

私のベッドの横にいるのは私の赤ちゃんか・・・。まるで夢を見ているようで、まだ実感が湧かない。
どちらに似ているかもまだ分からない。ただ、こんなに小さくてもちゃんと手足があって、指も5本あって、しかも爪まで伸びているのには驚きだ。
ついさっきまで羊水の中で生きていたのに、もう肺呼吸しているんだから大したものだ。
まさに「不思議な生き物」・・・そんな風に我が子を見つめていた。

母、夫、私の3人で我が子を囲み、そのしぐさや表情をしみじみ眺める。
それは何とも言えず充実した、幸せな、ゆったりとした時間だった。

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