出産への道 〜18日夜 Part 2〜

助産師さんは、作戦2として「おっぱいマッサージをしましょう」と言った。これは効きそうだ。
正期産に入ってから、おっぱいマッサージをしていたが、すぐにお腹が張って苦しくなるので、最後の頃は気が進まず、いやいやマッサージしていたのだ。

学生さんがマッサージを始めた。案の定、すぐに陣痛が激しく起こった。「おお、いいですね!!効果ありですね」またまた助産師さんは満足そうにモニターを眺める。
「もっと続けましょう」と、しばらくおっぱいマッサージは容赦なく続けられた。その度、激しい陣痛が起こって、いきんでしまう。しかし「もういきんでもいいですよ。」と言われ、やっと楽になった。
足台をセットされ、ベッドの背もたれの位置を調整する。やや起こし気味の位置で、背中に大きなクッションを置く。そして一番力を入れやすい体勢をいろいろと試してみる。両腕をあげて、頭上にあるバーに掴まり懸垂をするかのように体を引き寄せる方法、またはボートを漕ぐ時、オールを手前に引き寄せるような感じで、ベッドサイドにあるバーを掴んで思い切り引き寄せる方法。
結局、ベッドサイドのバーを掴む方法がいきみやすいことが分かって、スタンダードな体勢をとることにした。

いきみの波は激しく押し寄せる。「!!!いきみたーーーい!!!」と叫ぶと「はい!!いいですよー」と助産師さんは私の肛門を指でグッと押さえた。
ああ、なるほど!これで浣腸をしなかった理由が分かった。
「こっちの方向にいきんでくださーい」と、助産師さんが力の方向を誘導する。始めはよくわからないまま、いきみたい欲求のままいきんでいたが、だんだんコツを掴んできたらしく、「ああ、いいですね、上手ですよー。」とおだてられ、何度も何度もいきんだ。
「まず、深呼吸を2回して、呼吸を整えたら思い切りいきんでください。そして1回深呼吸したら、もう1度思いっきりいきんでください。この2回目が大事なんですよ」
と言うので、夢中で言う通りにいきんだ。
「1回ごとに上手になるねー、いいよー。赤ちゃん、ゆっくり回って降りてきてるからね」その言葉に励まされ、何度もいきんだ。

どれだけいきんだことだろう、しばらくして「赤ちゃんの頭がすぐそこまで見えて来たよ!!頑張って!!」という声が聞こえた。
うぉーーーー、もうちょっとだ!!もっといきんでやるぅ!!!!
もう無我夢中だった。
いきむ時、自分でも今まで出した事のないようなものすごい力を下半身に入れているのが分かる。1回いきむごとに、自分の身を削っているような感じだ。ここまでしなければ、人間1人産むことはできないのか・・・。いや〜、生半可なことではない。出産はまさに命がけだ。

「もう赤ちゃんの髪の毛が見えているので、先生呼んできます」と言い残し、助産師さんが出て行った。その間、学生さんがいきみの誘導をしてくれて、お産は続けられた。

間もなくして先ほどの先生が2人、入って来た。
「あと少しだから頑張ってね!!赤ちゃん元気ですからね!」先生に励まされ、今度は先生の誘導に従っていきみ続けた。

もうどれだけ時間が経ったのかも分からない。分かっているのは、あと少しで赤ちゃんに会えるということ。もう少し。もう少し・・・必死でいきんだ。
「赤ちゃんが無事に出てくるために、必要な場合は会陰切開しますけど、いいですか?」と先生が聞いてきた。
「ハイ、もうおまかせしますぅ〜」二つ返事でお願いした。会陰切開しなくて済むように、ゆっくりいきもうとか、会陰切開は痛そうで嫌だ、などと甘っちょろいことは言っていられない。
「一秒でも早く産み落としたい!!」・・・この一心だった。
麻酔を打たれて、先生が会陰にメスを入れているのが分かる。しかし、麻酔のおかげで何の痛みも感じない。さあ、これ赤ちゃんも出やすくなった!
よーし!!もうひとふんばりだ!!

しかし、ここまでくるとさすがに疲れが出て、私の体が言う事をきかなくなってきた。バーを掴んで引き寄せた勢いで腹筋に力を入れ、上半身を起こすのだが、気持ちはいきむつもりでも、もう体が起こせない。ぐったりと分娩台にもたれてしばらく休む。しかし、すぐに陣痛が来て腹の奥底から得体の知れない力が沸き起こる。見えない力で動かされている感じだ。
「あと4〜5回いきんだら赤ちゃん出てくるからね」という先生の言葉に、最後の力を振り絞って立て続けに3回ほどいきんだ。
「いいですよ、その調子!!もう出るよ、もう出てますよ〜」

「はい!!出ました〜、もう逃していいよ、ハッハッ・・・」

その瞬間、丸い頭が見えた。あとはズルーッと体が出て来て、下腹部がスーッと軽くなった。今までの痛み、重さが嘘のように消えた。

「フンギャー、フンギャー!!!」

出てきたとたん大きな泣き声を上げて、私の赤ちゃんがこの世に誕生した。

2005年7月19日(火) 午前0時24分、3,006gの元気な女の子だった。

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