昼間は数えるほどしか痛みがなく、何事もなく夜を迎えた。
そして案の定、夜中1時頃から痛みだして、あっという間に3分間隔になった。昨夜より強い痛みだ。夜中2時過ぎ、病院に連絡すると、意外にもあっさり入院の許可が下りた。
父の車で病院に向かい、昨夜と同じように採尿、内診。しかし、まだ子宮口は指1本程度しか入らない。
NSTの結果、お腹が頻繁に張っているとのことで、正式に入院が決まった。
そしていきなり分娩室に通され、分娩着に着替えるよう言われた。いきなりお産かと思ったが、実はベッドの空きがないため、とりあえず今夜はここで過ごすということらしい。
朝7時頃まで痛みは続いたが、結局分娩には至らなかった。
どうやらこの痛みはただの前駆陣痛らしい。今はまだ下腹部が痛いのだが、本当の陣痛はお腹全体、腰までが激しく痛むものだという。・・・また今回も肩透かしを喰らった。
分娩室で朝食をとり、洗面を終え、しばらく横になっていたが、ますます陣痛は遠のくばかり。お腹が痛いわけでもないのに横になっているのも退屈なので、分娩室にあったCDを聴いて時間をやり過ごしていた。
こんな調子で、まともな張りがないまま昼が過ぎた。まだ病室のベッドが空かないので、代わりの部屋に移るように言われた。
その部屋は『LSD』という、立ち会い分娩希望者のための部屋だった。陣痛、分娩、回復をこの部屋ですべて済ます事ができるため、移動の手間がなく楽だという。それに、普通の部屋のような雰囲気なので、リラックスしてお産に臨めるというメリットがある。
確かに、医療器具がむき出しで、殺風景な分娩室よりはこちらの方が怖くないだろう。
また、第二子出産の妊婦さんは、お子さんも立ち会えるので、この部屋を選ぶ人が多いようだ。
思いがけずLSDに泊まることになって、少しお得な気分だった。個室だから父母、夫も気軽に入れて、まるで家にいるような雰囲気。出産のためにここにいるということを忘れてしまう。
それでも、やはり夕方になると、それらしい痛みが出て来た。「今夜あたりいよいよだね」と母は言い、皆で来るべき時に備えて心の準備をしていた。
面会時間終了後、一人でヒマを持て余していた。病院内に置いてあった雑誌に目を通したり、iPodで音楽を聴きながら余裕で夜を過ごした。
そして、夜11時過ぎ。やはり陣痛はやってきた。壁掛け時計を眺めながら、陣痛の間隔を計る。午前0時半にもなると、3〜5分間隔になってきたのでナースコールをして、助産師さんを呼んだ。
助産師さんがNSTの機械を持って来て、お腹の張りを調べると、そこそこいい張りが来ている。
「じゃ、分娩室へ行きましょうか」との言葉で、再び分娩室に入ることになった。
「さあ、いよいよだ!」と、意気込みたっぷりで部屋を出た。夫にメールで連絡する。すぐに「がんばって」と返信が来た。「おぅ、まかしとけ!!」ぐらいに張り切っていたのだが・・・
・・・これから地獄の24時間が待っていようとは、この時の私は知る由もなかった・・・